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傍観者ではいられない

 

浅 田 阿久美
(吹田市)

 

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本誌への原稿の整理をしようとした10月の中旬、たまたま新聞に目を通すと「仮設の悲劇終わらず」との見出しで67歳の独り暮らしの男性が絶望感から癒されず自ら命を絶った・・・との記事が目に入った。震災の犠牲者はまだまだ、こうして後を絶たず続いています。
死は免れたものの家族や両親を失った多くの人々、とりわけ子供や高齢者、障害者などは2年近くが経過しても震災直後と同じように苦しみは変わっていないのです。兵庫県警などによると震災から今年9月末で仮設住宅で起きた孤独死は 104人にのぼるという。その内自殺者は今回の男性を入れ6人を数えるのだそうだ。 生き埋め、圧死、焼死、焼け跡、瓦礫などのニュースが飛び交い、「いのちがあっただけでもよかった」「とにかく無事でよかった」と安堵した人々が、その『地獄』から一歩いっぽと着実な生活に向かって今日を迎えるはずだったのですが・・・。
そうした当時の思いとは逆に仮設住宅での孤独死が相次ぐ今日の事態となっているのです。早く『安心』を与え、真に安堵したくらしを取り戻してあげたいという気持ちは誰も同じであろうと思います。

 

傍観者ではいられない今回の如き都市直下型大地震は将来どこでも起こりうる可能性があると言われています。今日の阪神大震災における深刻な事態を考えると自分も傍観者ではいられない、いざという時に子供や高齢者、障害者などに温かいこころで接する『福祉』が根づく街づくりをもっとキメ細かくすすめなければとの気持ちでいっぱいです。
「なんとかしなくてはならない」と、あせる気持ちだけでは事態は解決しない、いったい何から取り組んだらいいのだろうか、自分の立場で真剣に考えるべきだと原稿を書きながら思いを深めています。
私の住む地域は高齢者比率15.2パーセントと全国の14.0パーセントを上回り、本格的な高齢者社会を前にしています。
私たちの周囲のコミュニティには自治会、福祉委員会、母子会、高齢者クラブ、コミュニティ協議会などがあり、それぞれに活動しています。そうした活動の中で、ホームヘルパーの重要性が強調されだしてきています。行政も市民の協力を得て千名近いホームヘルパーの登録が近々必要になるとその深刻な事態を強調しています。
高齢者社会を前にしてあたたかい福祉の街づくりをコミュニティ活動に参加する立場からキメ細かく推進していきたい。そのことが、かりに阪神大震災規模の災害が自分の周りで生じても、それが必ずやその後の災害対策に役立つであろうと確信いたします。 私の住む街の市長は常々、緑化や公園づくり、高齢者や障害者が暮らしやすいまちづくりが、防災のためのまちづくりになると強調されています。
福祉の街づくりとしてキメ細かい対策となるホームヘルパーの取り組みについて、この

 

 

 

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